電通大の「後から専門を選べる」は、どこまで本当に自由なのか

15個から自由に選ぶ制度ではない。受験時に、2年後まで残しておく「5つの扉の束」を選んでいる。

「後から選べる」のに、受験時点でもう10個を閉じている

電通大の類制は、高校3年で研究分野まで決め切れない人には魅力的に見える。Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ類で入学し、2年次後学期から専門教育プログラムへ進むからだ。

ここだけ聞くと、「とりあえず電通大へ入り、あとで15プログラムから選べる」と想像しやすい。

実際には、専門教育プログラムは各類に5つずつある。Ⅰ類で入ればⅠ類の5つ、Ⅱ類ならⅡ類の5つ、Ⅲ類ならⅢ類の5つが基本の進路になる。

入学時に専門を決め切らなくていいのは本当だ。ただし、何も決めていないわけでもない。

電通大のⅠ類・Ⅱ類・Ⅲ類それぞれに5つずつ、合計15の専門教育プログラムがある構造を示す図

受験時に選んでいるのは、一つの専門ではなく、2年後まで残しておく5つの候補だと考えると制度が見えやすい。

Ⅰ・Ⅱ・Ⅲという名前だけでは、残る5つが見えない

Ⅰ類は情報系、Ⅱ類は融合系、Ⅲ類は理工系と説明される。入口としては分かりやすいが、この三語だけで類を選ぶには縮尺が粗い。

Ⅰ類にはメディア情報学、経営・社会情報学、情報数理工学、コンピュータサイエンス、デザイン思考・データサイエンスがある。Ⅱ類はセキュリティ情報学、情報通信工学、電子情報学、計測・制御システム、先端ロボティクス。Ⅲ類には機械システム、電子工学、光工学、物理工学、化学生命工学が並ぶ。

この一覧を見ると、「Ⅰ=プログラミング」「Ⅱ=ⅠとⅢの中間」「Ⅲ=機械と物理」のような覚え方ではかなりこぼれる。

セキュリティとロボティクスはⅡ類にある。電子に近い領域はⅡ類にもⅢ類にもある。化学と生命はⅢ類にある。

類名ではなく、残る5つを見て初めて自分の選択になる。

Ⅰ類では、「情報」の相手が違う

Ⅰ類をプログラミング中心の類だと思うと、5プログラムの違いが見えにくい。同じ情報系でも、コンピュータそのものを見るのか、数理として扱うのか、人間やメディアとの関係を見るのか、社会の中の情報を見るのか、データから意思決定する方法を考えるのかで方向は変わる。

だからⅠ類を考えるとき、「コードを書くのが好きか」より一段細かい問いが必要になる。

情報を、何との関係で考えたいのか。

数学、人間、社会、ソフトウェア。どこに興味が寄っているかで、同じⅠ類の中でも残したいプログラムは変わる。

「情報が好き」という言葉は、Ⅰ類に入る理由にはなっても、Ⅰ類を理解したことにはまだならない。

Ⅱ類は中間ではなく、境界そのものを扱う

「融合系」という名前から、Ⅱ類をⅠ類とⅢ類の中間だと考えると少し違う。実際のプログラムを見ると、二つ以上の領域がぶつかる場所そのものが専門になっている。

情報通信ではソフトウェアだけでなく信号、電波、ネットワークが混ざる。先端ロボティクスでは機構、制御、認識、情報処理が交わる。セキュリティも暗号だけで閉じず、ネットワークやハードウェアへ広がる。

ソフトウェアだけでは物足りないが、機械だけをやりたいわけでもない。そんな曖昧さは、Ⅱ類ではむしろ具体的な志望理由になり得る。

「中間だから何でも少しずつ」ではなく、境界に専門があると読む方が近い。

Ⅲ類まで見ると、「電気通信大学」という名前から外へ出る

大学名から想像しやすいのは情報、通信、電子あたりだろう。ところがⅢ類には、機械、電子、光、物理、化学生命がある。

光工学や化学生命工学まで並ぶと、「情報通信だけの大学」という印象では大学全体を説明できない。

さらに、電子やロボットのように類をまたいで近いテーマもある。電子に興味があるならⅡ類の電子情報学とⅢ類の電子工学を、ロボットならⅡ類の先端ロボティクス・計測制御とⅢ類の機械システムを並べて見た方がいい。

同じ対象に興味があっても、情報処理や通信との接続を残したいのか、デバイス、物理、機構そのものへ深く入りたいのかで入口は変わる。

「電子が好き」「ロボットが好き」だけでは、まだ類を一つに絞れない。

類制は、迷いを消す制度ではない

専門を後から選べると聞くと、「まだ決めなくていい」という安心感がある。けれど、この制度の価値は判断を先送りできることより、大学の授業を受けたあとに判断を更新できることにあると思う。

高校ではAIに惹かれていても、線形代数や確率を学んで数理へ寄るかもしれない。ロボットから入って制御の方が面白くなることもある。電子回路に興味を持ち、そこから通信へ動くこともある。

興味が変わること自体は失敗ではない。

電通大の類制は、その変化を前提に専門選択を二段階へ分けている。ただし、変化できる範囲は受験時に選んだ類の中でかなり決まる。

自由があるからこそ、どこまで自由なのかを先に見ておきたい。

第一志望より、「第一志望が外れたとき」を見る

類を選ぶとき、今いちばんやりたいプログラムだけを見ると制度の幅を使い切れない。

たとえばⅠ類でコンピュータサイエンスしか興味がない、Ⅱ類でロボティクスしか見ていない、Ⅲ類で機械しか知らないという状態なら、その第一志望が変わったときに何が残るか分からない。

僕なら、その類の5プログラムのうち少なくとも2〜3個に本当に興味を持てるかを見る。

第一志望を一度消しても、同じ類の中に次の候補が残るなら、「後から選べる」という制度が効いてくる。逆に、興味のある二つが別の類に分かれているなら、その境界こそ受験時に考えるべきところになる。

類制は迷いをなくすのではなく、迷いの範囲を選ぶ制度でもある。

配属の細部は、入学年度の資料まで確認する

2026年度の公式入試案内では、専門教育プログラムへ進むのは2年次後学期からと確認できる。一方、希望が集中した場合の調整、成績や定員の具体的な扱いなどは、年度ごとの学修要覧や学生向け資料まで確認した方が安全だ。

過去年度のルールを見つけて、現在も同じだと決めつけるのは簡単だが、こうした細部ほど変更の影響を受ける。

この記事では、確認できた範囲を超えて「成績順で決まる」「希望通り必ず入れる」とは断定しない。

実際に自分の配属条件が問題になる頃には、自分の入学年度の要覧が一番近い資料になる。

科目名で分からなければ、研究室から逆向きに見る

高校生にとって、信号処理、計測工学、情報理論、物性物理といった科目名から、4年生の研究生活を想像するのは難しい。

そこで、類紹介を読んだあとに研究室一覧を開く方法が使える。「ここなら卒研をやってみたい」と思う研究室を三つ選び、その研究室がどの類・プログラムにつながっているかを後から確認する。

AIでも、画像処理、機械学習理論、ロボット認識ではかなり違う。ロボットなら機構、制御、通信があり、電子なら回路、デバイス、情報処理との接続がある。

研究室まで降りると、「情報が好き」「ロボットが好き」という大きな言葉が壊れる。

その壊れ方が、類選びには役に立つ。

2年後に残したい5枚を選ぶ

電通大では、受験時に15プログラムの一つまで決める必要はない。一方で、15個すべてを2年後まで保留できるわけでもない。

Ⅰ類ならⅠ類の5つ、Ⅱ類ならⅡ類の5つ、Ⅲ類ならⅢ類の5つ。最初の仕分けは受験時にもう始まっている。

研究室を三つ選び、第一候補を一つ消してみる。残った候補がどの類にあるかを見る。その類の5プログラムを全部開き、2年後に興味が変わってもまだ面白いと思えるか考える。

「後から専門を選べる」という言葉の本体は、何も決めなくていいことではない。

2年後の自分に、どの5枚を残しておくかだ。

参考資料 6
  1. 2026年4月入学 一般選抜の概要 — 電気通信大学(確認 2026/8/31)
  2. カリキュラムの特徴 — 電気通信大学(確認 2026/8/30)
  3. Ⅰ類(情報系)の紹介 — 電気通信大学(確認 2026/8/30)
  4. Ⅱ類のカリキュラム — 電気通信大学(確認 2026/8/30)
  5. Ⅲ類(理工系)カリキュラム — 電気通信大学(確認 2026/8/30)
  6. 研究室公開一覧 — 電気通信大学(確認 2026/8/30)
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