電通大の7割院進より、2026入学者が修士へ行く2030年を見たい

令和6年度は約73.6%が進学。しかも2026入学者が標準4年で修士へ進む2030年から博士前期課程の授業料改定が始まる。

7割院進を6年間で考えるなら、2030年まで見ないと足りない

電通大では、卒業生のおよそ7割が大学院へ進学すると案内されている。割合だけ見ても十分に高く、「実質6年制に近い」と言いたくなる数字だ。

ただ、2026年に学部へ入る学生が標準の4年間を終え、そのまま博士前期課程へ進むのは2030年4月になる。

電通大は、2030年4月以降の博士前期課程入学者について、年間授業料を現在の53万5,800円から64万2,960円へ改定すると発表している。

つまり、2026年の受験生が「院進まで含めて6年間で考えよう」とするなら、修士2年間を現在の授業料で固定して見積もると、すでに公表されている未来とずれる。

電通大の学部4年から修士2年への時間軸と、2030年の博士前期課程授業料改定を示す図

7割という率は大学の雰囲気を表す。その先の2030年は、自分の生活と財布に落ちてくる。

令和6年度は、昼間コース624人のうち459人が進学した

大学が使う「およそ7割」は丸めた表現だ。令和6年度の情報理工学域・昼間コースでは、進学者459人、就職者153人、その他12人で合計624人。進学者の割合は約73.6%になる。

Ⅰ類は154人、Ⅱ類は160人、Ⅲ類は145人が進学している。類ごとの差はあるものの、特定の一類だけが全体を押し上げているわけではない。

73.6%という小数点そのものには、それほど意味はない。生活を考える上で効くのは、学部卒業の春に就職する学生より進学する学生の方が明らかに多いことだ。

研究室へ入れば、周囲で院試の話が出る。先輩の進路も修士が多くなり、就活の時期をM1基準で考える話も混ざる。

院進率は「進学しろ」という命令ではない。それでも、周囲で何が普通に見えるかは変える。

ただし、7割は電通大だけの特殊文化でもない

東京農工大の知能情報システム工学科は、公式Q&Aで約80%が大学院へ進学すると案内している。東京理科大は2026年3月卒業生について、全学の大学院進学率を55.1%、経営学部を除く昼間学部では65.1%としている。

これらは分母が違う。農工大は一学科、電通大は情報理工学域・学部、理科大の65.1%は複数の昼間学部をまとめた数字だ。したがって73.6%、80%、65.1%を精密な順位表にすることはできない。

それでも、研究型の理工系大学・学科で修士進学が多数派になること自体は、電通大だけの奇妙な現象ではない。

「電通大はほぼ6年制」というキャッチコピーに使うより、このあたりの理工系大学を比べるなら、4年分だけでは足りないという警報として7割を見る方が実用的だと思う。

比較対象を変えると、数字の意味も変わる。

電通大は6年制ではない。それでも6年後まで見た方がいい

制度上、電通大は4年制大学だ。大学院は別課程で、進学しない選択もあり、院試もある。外部大学院へ進む人もいる。

だから「実質6年制」という比喩を制度そのもののように扱うのは正確ではない。

一方、卒業生の約7割が院へ進む環境で、受験時に学部4年間だけを調べるのも不自然だ。研究室、博士前期課程の専攻、修士の費用、修了後の就職まで一度つなげて見る価値が高い。

僕には電通大が、6年制の大学ではなく、6年後まで調べる価値が高い4年制大学に見える。

その違いなら、進学しない自由も消さずに済む。

研究室が2年続くだけではなく、費用の条件も変わる

電通大では、学部の専門教育プログラムと博士前期課程の専攻がかなり連続している。情報学、情報・ネットワーク工学、機械知能システム学、基盤理工学などがあり、卒業研究で始めたテーマを修士でさらに深める学生も多い。

見た目には、研究室で過ごす時間がM1、M2まで延びるように感じられるかもしれない。

ただし、学籍も費用も学部と同じではない。2026年度時点の博士前期課程授業料は年53万5,800円で、2030年度入学者からは年64万2,960円へ改定される予定だ。

2026年の学部入学者にとって、2030年は遠い将来ではない。標準年限なら、自分が修士へ進む年そのものだ。

6年間を考えるなら、研究テーマの連続性だけでなく、カレンダー上で決まっている制度変更も同じ表に載せる必要がある。

将来の学費を予想する必要はない。決まっている変更だけ入れる

6年先まで見ると言っても、2031年以降の値上げを勝手に予測する必要はない。確認できる変更だけを使えばいい。

電通大については、2030年博士前期課程入学者の授業料改定がすでに公表されている。ならば費用表では、学部4年間、修士へ進む場合の2年間、既に決まっている授業料改定、入学料、利用できる奨学金や授業料後払い制度などを分けて置く。

「大学は4年だから4年分」ではなく、自分が選び得る進路ごとに費用表を作る。

院進が少数派の大学でも意味はあるが、7割が進学する電通大では、この作業をする学生の割合がかなり高い。

率が家計の話へ変わるのは、この段階だ。

就職先も、学部卒と修士修了を分けると違って見える

電通大の主な就職先には、NTTドコモ、日立製作所、NRI、ソフトバンク、NEC、富士通、ホンダ、NTTデータ、三菱電機などが並ぶ。

会社名だけを見ると、学部4年間を終えた学生の出口として読んでしまいやすい。実際には、課程別の人数を見ると目立つ企業ほど博士前期課程修了者が多い例がある。

7割が院へ進み、修士で専門を深め、その後に技術系企業へ出る。その流れを切り離すと、「就職に強い」という評価の中身も変わる。

電通大の学歴・就職評価では、主な就職先表の先頭14社について課程別人数まで集計している。

大学院は、就職の前に追加された寄り道ではなく、就職表の読み方そのものに入っている。

周囲の7割は、自分が進学する理由にはならない

ここまで6年間で見る話をしても、「電通大なら院へ行くべき」とは言えない。学部卒でやりたい仕事があり、研究をあと2年続けたいと思わず、早く実務へ出たいなら、学部卒就職には筋がある。

むしろ院進率が高い環境ほど、「みんな行くから」を理由から外した方がいいと思う。

友人が全員就職するとしても、自分は研究を続けたいのか。逆に、友人が全員院へ進むとしても、自分は働きたいのか。

7割は環境を説明する数字であって、個人の答えを代わりに出してはくれない。

進学率を見たあとに残るべきなのは、結論ではなく自分の理由だ。

2026年に入学するなら、2030年4月を一度置いてみる

電通大を候補にするなら、行きたい研究室をいくつか選び、その研究室がどの大学院専攻につながるかを見る。修士修了後の進路も確認する。

そこへ、2026年入学者なら2030年4月という日付を一つ加える。

標準4年で博士前期課程へ進む年であり、公表済みの授業料改定が始まる年でもある。

7割という割合は目立つ。しかし、受験生の生活を変えるのは、その割合の先にある研究、就職、二年間、そして費用だ。

2030年4月まで見えて初めて、「院進率7割」が自分の大学選びの数字になる。

参考資料 7
  1. 進路状況 — 電気通信大学(確認 2026/8/31)
  2. 令和6年度情報理工学域進学・就職者数 — 電気通信大学(確認 2026/8/31)
  3. 大学院情報理工学研究科学生数 — 電気通信大学(確認 2026/8/30)
  4. 主な就職先 — 電気通信大学(確認 2026/8/31)
  5. 2026年4月以降の授業料の改定 — 電気通信大学(確認 2026/8/31)
  6. 東京農工大学 知能情報システム工学科 Q&A — 東京農工大学(確認 2026/8/31)
  7. 東京理科大学 就職・キャリア関連データ — 東京理科大学(確認 2026/8/31)
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