電通大の就職先表、先頭14社では約9割が修士だった
NTTドコモ25人中24人が修士。これは全就職者の比率ではない。それでも会社名だけを見るのと、課程別人数まで読むのでは意味が変わる。
学歴研究会偏差値表の外側を見る大学観察者
NTTドコモ25人、うち24人が修士だった
電通大の「主な就職先」を開くと、NTTドコモ、日立製作所、野村総合研究所、ソフトバンク、NEC、富士通、本田技研工業、NTTデータ、三菱電機といった会社名が並ぶ。これだけ見れば、「電通大は大手就職に強い」と読むのは自然だ。
ただ、同じ表には会社名の右側に課程別の人数も載っている。
令和6年度のNTTドコモは計25人。そのうち学部・学域卒は1人で、博士前期課程修了者が24人だった。日立製作所は20人中15人、NRIは13人中10人が博士前期。ホンダ、NTTデータ、三菱電機は、掲載人数の全員が博士前期課程修了者だった。
表の先頭14社を単純に足すと、学部・学域15人、博士前期131人、合計146人。博士前期が約89.7%を占める。
この89.7%は、電通大の就職者全体に占める修士比率ではない。令和6年度の「主な就職先」表の先頭14社だけを集計した数字で、年度も一年度に限られる。
それでも、会社名だけを読んだときと同じ表には見えなくなる。
「就職実績」を学部4年の出口だと思うと、構造がずれる
電通大では、情報理工学域・学部卒業生のおよそ7割が大学院へ進む。令和6年度の昼間コースでは624人中459人が進学しており、約73.6%だった。
この進学率を横に置くと、先ほどの就職表で修士が目立つことはそれほど意外ではない。学部で研究室に入り、博士前期課程へ進み、さらに2年間専門を深めてから技術系企業へ出る。電通大では、この経路を大学生活の周辺扱いにする方が不自然だ。
だから「電通大に入れば、学部4年で大手企業へ行きやすい」と読むのは強すぎる。一方で「学部卒では大手へ行けない」も違う。日立のように学部・学域卒がいる企業もあり、表を下れば学部側の人数が見える企業もある。
確認できるのは、もっと狭いことだ。目立つ大手就職のかなりの部分を説明するには、修士段階を外せない。
この違いは、受験時に大学を4年制として見るか、6年まで含めて見るかに効いてくる。
「知名度は低いが就職に強い」では、まだ説明が粗い
電通大については、「一般知名度は低いが企業には評価される」という言い方をよく見かける。ただ、全国でどの程度知られているかを直接測る、公的で使いやすい統計は確認できない。少なくとも、世間の何%が電通大を知っているとは言えない。
一方、就職先や進学率は公開データで追える。
そこで見えるのは、「企業が大学名を高く評価している」という一枚の証拠ではない。情報、通信、電子、制御、ロボティクス、機械などの専門を持つ学生が、研究室や修士課程を経て、通信、IT、電機、メーカーへ出ているという経路だ。
僕には、電通大は「知名度の低さを就職力で逆転する大学」というより、大学名から専門へ降りるほど、評価材料が増える大学に見える。
大学名だけで話を終えると、この大学の特徴を一番薄いところで切ってしまう。
就職支援も、専門の単位で企業につながっている
電通大の就職支援には大学全体の窓口だけでなく、大学院専攻や対応する専門教育プログラム群ごとの就職事務室がある。そこでは専攻指定求人や学校推薦などの情報を扱っている。
つまり、学生は単に「電通大生」として就職活動をするだけではない。情報学、ネットワーク、機械知能、基盤理工など、自分の専門の単位でも企業と接続する仕組みになっている。
もちろん、就職事務室が専門別に分かれていることから「だから内定しやすい」と因果関係までは言えない。ただ、大学自身が就職支援を専門ごとに組んでいるという事実は、就職を大学名一枚で説明するには粗すぎることを示している。
先頭14社の89.7%という数字も、同じ方向を向いている。会社名の前には、課程と専門がある。
就職先表では、会社名より列見出しの方が先に効く
大学比較で就職先を見ると、Google、トヨタ、NTTデータ、ソニーのような会社名へ目が行く。けれど、その会社名が何を意味するかは、表の作り方でかなり変わる。
学部卒なのか修士修了なのか。どの専攻なのか。何人なのか。一年度だけなのか複数年度なのか。大学全体なのか特定学部なのか。
電通大の表は課程別人数まで出しているので、この情報を捨てて会社名だけを抜くのはもったいない。
僕なら、就職先表を開いたら最初に列見出しを見る。企業名が豪華かどうかより、その数字が誰を数えているのかを先に確かめる。
同じ会社名でも、そこで見えている大学生活の長さが変わるからだ。
89.7%を「修士なら大手に行ける」と読んだ瞬間、数字は暴れる
強い数字には、逆方向の読み違いもある。先頭14社で博士前期が131人だったからといって、修士へ進めば大手企業へ入れるわけではない。
そもそも大学院へ進む学生が多く、企業側の採用人数も年度ごとに変わる。誰が応募したのか、研究内容や成績、面接、インターン、職種適性がどうだったのかも、この表からは分からない。
修士は切符ではない。
89.7%から言えるのは、電通大の目立つ企業就職を説明するときに、修士段階を無視できないということまでだ。数字が強いほど、結論の範囲は狭くした方が安全になる。
その狭さのままでも、受験生には十分大きな情報だと思う。
「電通大は就職に強い?」を、研究室まで下ろしてみる
受験校として電通大を見るなら、大学名の評判を先に集めるより、興味のある研究室を三つほど開いてみる。その研究室がどの類・プログラム、大学院専攻につながるかを確認し、学部卒と修士修了を分けた就職先を見る。最後に、自分が将来やりたい企業や職種の募集要項を重ねる。
すると、「電通大は学歴として強いか」という大きな問いが少し変わる。
この研究を修士まで続けたとき、どの職種へつながりそうか。
後者なら、大学選びの材料として実際に調べられる。研究室も、課程も、求人も具体物だからだ。
NTTドコモ25人という会社名の数字も、その経路の最後に置くと意味がはっきりする。
会社名の前に、二年間が隠れている
令和6年度のNTTドコモは25人中24人が博士前期課程修了者だった。主な就職先表の先頭14社では、146人中131人が博士前期だった。大学の就職支援も専門群ごとに組まれている。
これらは「電通大なら大企業へ行ける」という宣伝文句にはならない。
ただ、電通大の就職実績を読むときに、大学名だけを見ていては足りないことは分かる。学部で専門を選び、研究室へ入り、その先の修士二年間まで含めて、初めて会社名の並びに輪郭が出る。
就職先表の「NTTドコモ25人」の横には、見えない二年間がある。
参考資料 4
- 電気通信大学 進路状況 — 電気通信大学(確認 2026/8/31)
- 令和6年度卒業生・修了生の主な就職先 — 電気通信大学(確認 2026/8/31)
- 令和6年度 情報理工学域の進学・就職者数 — 電気通信大学(確認 2026/8/31)
- 専攻・プログラム別就職支援 — 電気通信大学(確認 2026/8/31)