電通大の併願で芝浦を受けるなら、「滑り止め」と呼ぶ前に4年間を比べたい

芝浦自身が電通大を主な国公立併願先に挙げる。受けやすさの先に、4年間で数百万円規模の学校費用差と別の専門構造がある。

芝浦工大自身が、電通大との併願を想定している

電通大の併願校を考えると、芝浦工業大学はかなり現実的な候補になる。これは受験掲示板の印象ではなく、芝浦工大自身が2026年度入試向けの「併願戦略」で、進学者のうち30%以上が国公立大学を受験していたと案内し、主な併願先として千葉大、電気通信大、埼玉大、東京都立大、横浜国立大を挙げている。

「電通大が本命で、芝浦も受ける」は、大学側も想定している受験行動だ。

だからこそ、「国立本命/私立の滑り止め」という言葉だけで二校の関係を決めると、その後が抜ける。

本命に落ちた翌日、滑り止めは4年間を過ごす進学先になる。

芝浦は、併願しやすいようにかなり設計されている

2026年度入試では、大学入学共通テスト利用方式を全学部・全コースで併願できる。大学独自試験を受ける方式でも複数コースを同日に出願でき、公式ページでは一つのコースについて最大9回の合否機会を作れるケースまで示している。

共テ利用なら、電通大受験のために受けた共通テストをそのまま使える。前期日程などでは英語の独自試験を置かず、数学・理科と英語資格や共テ英語を組み合わせる方式もある。

受験戦略としては合理的だと思う。

ただし、併願しやすさは2月までの話だ。進学したいかどうかは、その後の4年、場合によっては6年で決まる。

ここを分けないと、「受けやすい大学」がそのまま「行きたい大学」になってしまう。

4年間の費用を置くと、「滑り止め」の軽さが消える

芝浦工大は2026年度入学生について、4年間の学費・委託会費を一枚の表で公表している。各期の「計」を単純に足すと、4年間で655万80円になる。

一方、電通大の2026年度昼間学部は入学料28万2,000円、年額授業料64万2,960円。入学料と授業料を4年分置くと、285万3,840円。単純差は369万6,240円だ。

数百万円の差になる。

ただし、この二つは完全に同じ費目ではない。芝浦の655万80円は大学の表にある「計」を足した数字なので、維持料や自治会・後援会などの委託会費も含む。電通大の285万3,840円は入学料と授業料だけで、学研災、後援会、学友会、生協出資などの諸経費は別になる。

したがって369万6,240円を、そのまま全員の実負担差とは言えない。それでも、学校費用の景色が数百万円単位で違うことまでは消えない。

「私立だから高い」で流すには大きい。

ただ、定価だけで芝浦を切るのも粗い

芝浦工大には、地方出身者向けの「朝日に輝く奨学金」がある。2026年度入試向け案内では、条件を満たす成績優秀な入学者に年間110万円を最長4年間給付し、「実質、国公立大学並みの授業料」と説明している。

対象になれば、さきほどの定価差の意味は大きく変わる。

だから費用比較では、定価と自分の実負担を分けた方がいい。まず公表されている学校費用を見る。そのあと、自分が対象になり得る給付や減免を引く。

「国立だから安い、私立だから高い」は入口としては間違っていない。ただ、出願先を決める最後の数字にはならない。

芝浦の「情報系」も一つではない

併願先を大学名だけで決めると、専門の対応関係もぼやける。

2026年度の芝浦では、工学部の情報・通信工学課程だけでも情報通信コースと情報工学コースがある。さらにシステム理工学部にはIoT、ソフトウェア、メディア、データサイエンスという情報系の入口があり、電気電子側には電気・ロボット、先端電子もある。

この並びは電通大と少し似ている。「情報系」という一語の下に、ソフトウェア、通信、データ、メディア、IoT、電子が分かれているからだ。

電通大Ⅰ類を受ける人が、芝浦では情報工学だけを見る必要はない。Ⅱ類寄りの興味なら情報通信や電気・ロボットの方が近いこともあり、データサイエンスやメディアに強く寄りたいならシステム理工学部側が候補になる。

併願校を一つ増やすというより、自分の興味に対応する進路を一つ増やすと考えた方がいい。

「電通大は院進、芝浦は学部就職」という絵も古くなっている

電通大では、学部卒業生のおよそ7割が大学院へ進む。一方の芝浦工大も、2026年3月卒業生では大学全体の大学院進学率が50%まで上がったと報告し、60%、さらに将来的には70%を目指す方針を示している。

旧課程の情報通信工学科は2026年3月卒で38.2%、情報工学科は45.9%だった。

分母も課程も違うので、電通大の約7割と小数点まで競わせる意味は薄い。ただ、「国立の電通大は院進、私立の芝浦は4年で就職」という単純なイメージは、現状とずれ始めている。

芝浦も研究大学化を明確に進めている。もし芝浦へ進学して修士まで行くなら、学部4年の費用だけではなく、6年間の費用と研究室まで見た方がいい。

滑り止めだと思って受けた大学で、そのまま修士まで過ごす可能性もある。

就職率99%台だけでは、最後の一票になりにくい

芝浦工大は高い就職内定率を強く打ち出し、電通大も大手IT、通信、電機、メーカーへの就職実績が目立つ。ここだけ並べると、どちらも「就職に強い」で終わってしまう。

けれど大学院進学率が高い大学では、学部卒就職と修士修了就職を混ぜると見え方が変わる。同じ企業名でも職種は分からない。

僕なら、就職率をそのまま大学の勝敗には使わない。行きたい研究室を三つ選び、その研究室からどの産業や職種へつながっているかを見る。

電通大と芝浦の差は、大学名より専門の枝まで降りたところで出やすい。

出願ボタンを押す前に、一度だけ不合格の日を置く

電通大本命で芝浦を受けること自体は合理的だと思う。芝浦自身が電通大を主要な国公立併願先として挙げ、共テ利用もあり、複数コースへ出願しやすい。

ただ、僕なら出願前に一度だけ嫌な想像をする。

電通大は不合格。芝浦だけ合格。

その画面を見た日に、「ここなら行きたい」と思えるか。

芝浦で行きたいコースを一つ決め、自宅からの通学を出し、研究室を三つ見て、自分が使える奨学金を確認する。4年間、院進も考えるなら6年間の費用も置く。

そこまで見て進学したいと思えるなら、芝浦は良い併願校だと思う。出願しやすさしか確認していないなら、まだ「受ける大学」が決まっただけで、「行ける大学」は決まっていない。

滑り止めは、落ちた日に本命になる。

参考資料 6
  1. 2026年度入試 併願戦略 — 芝浦工業大学(確認 2026/8/31)
  2. 2026年度入学生 学費 — 芝浦工業大学(確認 2026/8/31)
  3. 2025年度卒業生就職・進路データ — 芝浦工業大学(確認 2026/8/31)
  4. 2025年度事業報告 — 芝浦工業大学(確認 2026/8/31)
  5. 入学料(入学金)・授業料一覧 — 電気通信大学(確認 2026/8/31)
  6. 進路状況 — 電気通信大学(確認 2026/8/31)
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