電通大と理科大、初年度89.5万円の差を「国立と私立」で流していいか
情報系の入口もキャンパスも一つではない。2026年度の学校費用差まで置いて、それでも行きたい学科があるかを考える。
学歴研究会偏差値表の外側を見る大学観察者89万5,040円。偏差値表には、この列がない
電通大と東京理科大を比べるとき、まず偏差値を見る人は多い。 次に就職。 そのあと、たぶん「国立と私立だから学費は違うよね」で済ませる。
でも2026年度の数字を実際に置くと、少し空気が変わる。
電通大の昼間学部は、入学料28万2,000円、年間授業料64万2,960円。初年度の入学料+授業料は92万4,960円。
東京理科大の工学部情報工学科と創域情報学部情報理工学科は、入学金30万円、年間授業料119万円、年間教育充実費33万円。学校へ納めるこの三項目だけで182万円になる。
差は89万5,040円。
学生傷害共済補償費などを含む理科大の初年度納付金合計は186万4,740円だ。
僕は、この差を「まあ私立だから」で一行に畳むのは、かなり乱暴だと思う。
ただし、89.5万円だけで電通大の勝ちにするのも雑だ
安い方が自動的に良いなら、比較はここで終わる。 もちろん終わらない。
理科大の特定の学科や研究室に行きたい理由があるなら、その費用差を払う意味はあり得る。 むしろ聞きたいのは、何に対して89.5万円多く払うのかを言葉にできるかだ。
「理科大の方がなんとなく有名だから」では弱い。 「この学科のこの研究室で、この分野をやりたい」まで言えるなら話は変わる。
お金は大学の価値そのものではない。 でも、家計から実際に出ていく以上、大学比較の脇役でもない。
そもそも「理科大の情報系」は一つではない
ここがこの比較のもう一つの罠だ。
東京理科大には工学部情報工学科がある。 2026年4月には創域情報学部情報理工学科も始まった。 さらに創域理工学部の電気電子情報工学科にも情報・通信へ進む道がある。
「電通大 vs 理科大の情報系」と言っても、理科大側の入口が一つではない。
工学部情報工学科は葛飾キャンパス。 創域情報学部情報理工学科は野田キャンパスで、運河駅から徒歩5分と案内されている。
電通大は調布駅から徒歩5分。大学公式では新宿駅から調布駅まで京王線で18分としている。
つまり、理科大のどの情報系を選ぶかは、学問だけでなく毎朝どこへ向かうかも同時に選ぶことになる。
「理科大は東京の私大」という一言では、学生生活をほとんど説明していない。
電通大は入口を太く残し、理科大は学科名を早めに持つ
電通大は情報理工学域の中にⅠ・Ⅱ・Ⅲ類を置き、その先に15の専門教育プログラムがある。
情報系のテーマも、コンピュータサイエンス、情報数理、データサイエンス、メディア、セキュリティ、情報通信などに分かれていく。
理科大の工学部情報工学科では、1・2年次に数学・物理と情報工学の基礎を学び、その後ソーシャルデザイン、データサイエンス、ソフトウェアデザイン、インテリジェントシステムへ専門を広げる。
創域情報学部情報理工学科は、コンピューティングとデータを横断し、AI、コンピュータ科学、データ科学、社会システムなどを扱う。
学べる内容には重なりが多い。 違うのは、出願時点でどの名前を選ぶかだ。
僕なら、情報・通信・電子の間でまだ揺れている人には電通大の“太い入口”を魅力として見る。 理科大の特定学科のカリキュラムにすでに惹かれているなら、早めに入口を細くすることは欠点ではない。
電気電子まで行くと、二校は思ったより近い
大学名の印象では「電通大=情報通信」「理科大=理学」という雑なイメージが残りやすい。
でも、創域理工学部電気電子情報工学科は、電気工学、電子工学、情報通信工学を扱う。 電通大Ⅱ類にも情報通信、電子情報、計測・制御、ロボティクスが並ぶ。
無線、回路、制御、セキュリティへ降りると、大学名より研究室名の方が役に立つ。
この領域で迷っているなら、「どちらが情報に強いか」という大きすぎる質問をやめて、両校から研究室を三つずつ開いた方が早い。
院進率を並べるときは、分母を揃えないと数字が暴れる
電通大は、情報理工学域・学部卒業生のおよそ7割が大学院へ進むと公表している。
東京理科大は、2026年3月卒業生の大学院進学率を全学で55.1%、経営学部を除く昼間学部で65.1%としている。
数字だけ見ると「電通大の方が少し高い」と言いたくなる。 でも分母が違う。
電通大は情報理工学域・学部。 理科大の65.1%は複数の理工系学部をまとめた数字。
僕は、ここから細かい勝敗を作らない。 読み取るなら「どちらも院進が珍しい大学ではない」までで十分だと思う。
その先は、候補にしている研究室の学生がどれくらい修士へ進むかを見る方が自分に近い。
就職先の会社名は、かなり重なる
理科大の情報系の就職先には、NTTデータ、NTTドコモ、NEC、富士通、野村総合研究所、日立製作所、三菱電機などが並ぶ。 電通大にも同じ企業群が多く出てくる。
だから「大手に行ける方」を会社名リストだけで決めるのは難しい。
同じ会社でも職種は違う。 採用人数も違う。 研究内容も違う。
就職で比べるなら、行きたい職種を三つ決め、その職種につながる研究室や専攻を探す方がいい。 会社名は、そのあとで見る。
僕なら「89.5万円多く払ってでも行きたい理由があるか」で最後に切る
両方受かったとする。
まず、理科大で本当に比較している学科を一つに固定する。 葛飾なのか、野田なのか。そこを曖昧にしない。
次に、自宅から平日朝の通学経路を出す。 両校から興味のある研究室を三つずつ選ぶ。
そして最後に、初年度の学校費用差89万5,040円をもう一度置く。
理科大側に「この学科、この研究室へ行きたい」がはっきりあるなら、その差を払う理由は作れる。 それがなく、大学名と就職先の印象だけで迷っているなら、僕は電通大の費用差をかなり重く見る。
国立か私立か、ではない。
初年度に約89.5万円多く払ってでも、その学科へ行きたいか。
そこまで具体化すると、大学比較はようやく自分の財布と四年間の話になる。
参考資料 10
- 学ぶ — 電気通信大学(確認 2026/8/31)
- 進路状況 — 電気通信大学(確認 2026/8/31)
- 入学料(入学金)・授業料一覧 — 電気通信大学(確認 2026/8/31)
- 電通大ってどんな大学? — 電気通信大学(確認 2026/8/31)
- 工学部 情報工学科 — 東京理科大学(確認 2026/8/31)
- 創域情報学部 情報理工学科 — 東京理科大学(確認 2026/8/31)
- 2026年4月、創域情報学部 誕生 — 東京理科大学(確認 2026/8/31)
- 創域理工学部 電気電子情報工学科 — 東京理科大学(確認 2026/8/31)
- 2027年度 総合型選抜 募集要項(2026年度初年度納付金を掲載) — 東京理科大学(確認 2026/8/31)
- 就職・キャリア関連データ — 東京理科大学(確認 2026/8/31)